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福島地方裁判所 平成6年(わ)4号 判決 1994年7月20日

本店所在地

福島県相馬市立谷字天ケ沢一七〇番地

株式会社

福装

(代表者代表取締役 笠原勇進)

本籍

埼玉県草加市花栗四丁目二〇二番地の一

住居

同県同市花栗四丁目一三番一号

会社役員

笠原勇進

昭和七年九月二〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官野口元郎出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社福装を罰金一二〇〇万円に、

被告人笠原勇進を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人笠原勇進に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社福装は、福島県相馬市立谷字天ケ沢一七〇番地に本店を置き、縫製・加工等を目的とする資本金六〇七五万円の株式会社であり、被告人笠原勇進は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人笠原は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、平成三年八月一日から同四年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億八〇七八万九七五二円であったのにかかわらず、同年九月二九日、同市中村字曲田九二番地二所在の所轄相馬税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二三七三万〇三五五円でこれに対する法人税額が四一九四万八九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇〇八四万六〇〇〇円と右申告税額との差額五八八九万七一〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人株式会社福装代表者及び被告人笠原勇進の当公判廷における供述

一  被告人笠原勇進の検察官に対する各供述調書

一  被告人笠原勇進の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人株式会社福装代表者及び被告人笠原勇進作成の上申書

一  森義一、鳥山義樹、佐藤正和、野原康宏、佐々木武則、古口雄也、向山栄二郎及び小山保の検察官に対する各供述調書

一  中野憲治(三通)及び泉井裕美子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  中野憲治、佐藤正和、森義一及び佐々木武則作成の各上申書

一  鈴木昭男及び岩尾孝之作成の各申述書

一  検察事務官作成の各捜査報告書

一  大蔵事務官作成の銀行調査書、売上除外額調査書、棚卸製品等調査書、架空外注費調査書、架空給与調査書、交際費等調査書、租税公課調査書、受取利息等調査書、道府県民税利子割調査書、交際費損金不算入額調査書及び事業税認定損調査書

一  大蔵事務官作成の告発書

一  登記官作成の商業登記簿謄本

(法令の適用)

一  被告人株式会社福装

罰条 法人税法一五九条一項、二項、一六四条一項

宣告刑 罰金一二〇〇万円

二  被告人笠原勇進

罰条 法人税法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑

宣告刑 懲役一年

刑の執行猶予 刑法二五条一項

(量刑事情)

被告人株式会社福装は、縫製・加工等を主たる業務とするもので、被告人笠原勇進は、同会社代表取締役として同会社の業務全般を統括する者であるが、不況期に備えてできるだけ税金を少なくして会社の備蓄資産を形成するなどの目的のため、前判示のとおり、所得において合計一億五七〇五万円余を秘匿し、税額において五八八九万七一〇〇円をほ脱したもので、秘匿所得、ほ脱税額は多額である上、ほ脱率は五八・四〇パーセントと低からぬものであり、また、その手段、方法は、売上を除外し、架空外注費を計上したほか、期末製品棚卸高を過少計上するなどの方法で利益の圧縮を図り、秘匿した資金を簿外預金、簿外貸付金、売掛金などとして留保していたほか、簿外の交際費に支出していたものであり、その犯行態様は巧妙かつ計画的にして悪質であって、その刑事責任は重いというべく、とりわけ被告人笠原勇進は、被告人株式会社福装の脱税を自ら企図し、部下社員に指示してこれを敢行したもので、本件脱税に関与した責任は重いといわざるを得ない。

しかし、当然のこととはいえ、本件発覚後においては、右脱税額に見合う修正申告をなし、これに伴う附帯税を含め、これらを完納していること、修正申告に伴う地方税の納付においても県民税、事業税、及び未定の重加算税、延滞税分を除く市民税本税を完納していること、被告人笠原勇進は、前科、前歴なく、犯行を反省していること等の事情も存するので、その余の諸事情をも総合斟酌して主文掲記のとおり、被告人株式会社福装については罰金刑に処し、被告人笠原勇進については懲役刑に処するとともに特にその刑の執行を猶予するのが相当と認める。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 井野場明子)

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